「管理職」とは…
労働者であるにもかかわらず、「管理職」という名ばかりの役職を与えて残業代を払っていないことが、昨今社会問題となりました。
労働基準法41条から「管理職」について考えてみましょう。
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(労働時間等に関する規定の適用除外)
第41条 この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
(2) 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱うもの。
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「監督若しくは管理の地位」=「管理職」は、いつ業務を開始または終了しようと、いつ休憩しようと休日に労働しても、36協定の締結・届出等の手続きは必要なく、当然、時間外・休日労働の割増賃金の必要はないということになります。
もっと簡単に言えば、「管理職」という役職を与えれば、残業代を払わなくてもよい、ということになってしまいます。
このことを、使用者側は自分の都合のいいように解釈をし、労働者であるにもかかわらず、名ばかりの役職を与え、残業代を払わない企業が多数存在しました。一例として東京電力、未払い残業代69億円、ビックカメラ30億円などです。
そもそも「管理職」とはなんでしょうか。その答えは、役職の名称ではなく、その実態によって判断されます。
「名ばかり管理職」の問題を解決すべく、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という通達が新たに出されました。その通達は以下のようになっています。
●職 務 内 容 ・ 責 任 と 権 限
重要な要素
・店舗のアルバイト・パート等の採用に関して実質的な責任と権限がない場合
・店舗のアルバイト・パート等の解雇に関して職務内容に含まれておらず、実質的に関与しない場合
・部下の人事考課が職務内容に含まれておらず、実質的にもこれに関与しない場合
など
●勤 務 態 様
【重要な要素】
・遅刻、早退等により減給の制裁、人事考課での不の評価など不利益な取扱がされる場合
【補強要素】
・労働時間の規制を受ける部下と同様の勤務態様が労働時間の大半を占めている場合
など
●賃 金 等 の 待 遇
【重要な要素】
・実態として長時間労働を余儀なくされた結果、時間単価に換算した賃金額において、店舗のアルバイト・パート等の賃金額に満たない場合
・またその額が最低賃金額に満たない場合
【補強要素】
・基本給、役職手当等の優遇措置が、実際の労働時間数を勘案した場合に、割増賃金の規程が適用除外となることを考慮すると十分でなく、当該労働者の保護に欠けるおそれがあると認められる場合
など
以上の場合は、管理監督者に該当しません。
今問題になっている「名ばかり管理職」の問題で懸念されることがあれば、上記の内容と比較してみることをお勧めします。