裁判員制度における企業の対応は?
いよいよ裁判員制度がスタートしました。県内でもすでに何件か実施されており、いつ自分が裁判員として出席することになるか分からない、非常に身近な問題となりました。
実際に従業員が裁判員候補者に選ばれたり、裁判員を務めたりした場合、企業としてどう対応したらよいか、休暇制度・給与面、労務管理上から考えてみます。
●休 暇 制 度 ・ 給 与 面
裁判員制度では、裁判員であれば1日10,000円以内、裁判員候補であれば1日8,000円以内の「日当」が支給されます。(旅費は実費にて支給。)
ここで、裁判員に選ばれた従業員に対してどのような対応をすればよいのか考えてみたいと思います。法務省が本年6月3日までに厚生労働省との協議の上発表された統一的見解から考えてみましょう。
①給与を従業員から使用者に納付させる裁判員用の特別の有給休暇制度
⇒ただちに裁判員法等に違反するものとはされていないが、裁判員法100条「不利益取扱」に該当することもある。法務省等の「統一見解」でも「納付する」ことを勧めているわけではない。
② 日当を受領した従業員に対して、給与から減額する、または給与を与えない
⇒法務省等の「統一見解」では、一般的には認められない。
ただし、あらかじめ「差額を支給する」というような特別有給休暇制度にすることは可。 また、労働基準法において「公の職務を執行する」場合、休暇を認める、または与えればそれで足りるので、有給とすることまでは義務付けられていない。
③ 日当を受領した従業員に対して、日当とは別に給与を与える
⇒問題無し。
●労 務 管 理 面
繁忙期のため従業員が辞退を考えているとき、どのようなケースがあるか考えてみます。
① 辞退の申し立てをするかどうか等、使用者と事業員とが「協議」する
⇒裁判員法101条1項に違反しない。
② 業務上特に支障となる事情のあることを理由に、辞退の申し立てをするように命令する
⇒裁判員法100条に違反。
③ 職務従事予定期間に支障が見込まれるとしても、参加の意思を持っている労働者に対して、辞退を強要する
⇒労働基準法7条に違反。
新しい制度なので何かと分からないことも多いですが、正しい知識を持って労働者も使用者も対応していく必要があると思われます。